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第19話「家路」(原作台詞版)(下)

樓主 Amory amory626


  (BGM:東風 -piano-)

  翌朝。
  第二天早上。
  開店の準備を始めるオッサンの怒鳴り声で目を覚ます。
  做開店準備的大叔吼聲,把我吵醒了過來。
  汐は毛布にくるまって、眠ったままでいた。
  裹在毛巾裡的汐,還正香甜地睡著。
  朝の光を受けるその姿が、本当に天使のように見えた。
  映照著晨曦的樣子,真的是如同天使一般。

  (親バカだ…)
  (父母痴心啊…)

  自分を鼻で笑ってから、今後のことを考え始める。
  自嘲地笑了笑後,我開始考慮今後的事。
  汐との生活。
  與汐一起生活。
  きっと、予想以上に大変だろう。
  肯定會比預想中更加辛苦吧。
  でも、一番大変な時期は、早苗さんが面倒を見てくれた。
  不過,最艱辛的那段時間裡,卻把汐交給了早苗阿姨照顧。
  これから迎えるどんな苦労だって、早苗さんの苦労の比じゃないんだ。
  把接下來將要面對的辛勞,與早苗阿姨所承受過的辛勞相比,根本微不足道。
  それを考えると、どんな困難にだって、立ち向かっていける気がした。
  這麼想著,我慢慢找回了那種敢面對任何困難的信心。
  それに苦労もあるだろうけど、楽しいこともそれ以上にたくさんあるはずだった。
  雖然會很辛苦,但畢竟還有更多的歡樂在等著我。
  家族で暮らすということは、そういうことだ。
  家庭生活,就應該是這樣。
  俺はあの日、渚とふたりで暮らし始めて…そのことを誰よりも経験した人間のはずだった。
  從那一天與渚一起生活開始…我已經是比誰更有經驗的人了。
  けど、汐との生活を始める前に、果たさなければいけない約束があった。
  不過在和汐開始新的生活之前,還有一個約定在等著我去實現。
  仕事のほうは、頼み込んで、もう一日だけ休みをもらおう。
  把工作的事情拜託給別人,騰出一天空閒吧。
  そして、今日はその約束を果たしにいこう。
  今天,我要去實現那個約定。
  汐を寝かせたまま、部屋を後にする。
  讓汐繼續睡著後,我走出了房間。


  「あ、起こしてしまいましたか」
  「啊,把你吵醒了嗎?」

  「いや、いいっすよ。なんか、俺にできることありますか?」
  「不,沒那回事。有什麼我能幫上忙的地方嗎?」

  「いえ、騒がしいですけど、休んでいてください」
  「不用了,雖然有點忙,但還是休息吧。」

  「いや、これからもうひとつわがままを言ってしまうので、手伝わせてください」
  「不,等會我還要拜託您一件很任性的事,所以現在就讓我幫幫忙吧。」

  「いえ、手伝ってもらわなくても、わがまま聞きますよ」
  「沒關係的,就算不幫忙我也會聽你說的。」
  「なんでしょうかっ」
  「是什麼事呢?」

  「ええと、それじゃ、お言葉に甘えて…」
  「這個,那麼我就不客氣地直說了…」
  「夕方まで…」
  「到傍晚為止…」

  いや、もう少し時間が欲しい。
  不,我需要更多的時間。

  「…明日の朝まで、汐を預かってほしいんです」
  「…到明天早上為止,可以幫我照顧一下汐嗎?」

  「はい、構いませんよ」
  「嗯,當然可以。」

  「すみません。最後にしなくちゃいけないことがあるんで」
  「抱歉,有件事必須要去做。」

  「仕事じゃなくてですか?」
  「不是工作上的事情嗎?」

  「はい」
  「嗯。」

  「お父さんのことですね?」
  「是父親那邊的事情吧?」

  さすが早苗さん。察しがいい。
  不愧是早苗阿姨,一猜就中。

  「ええ、そうです」
  「嗯,是的。」
  「ふたりきりで、話したかったので」
  「有些話想和父親單獨談談。」

  「はい。ゆっくりしてきてください」
  「好的,請放心去吧。」

  その後、事務所に連絡をして、無理矢理さらに一日休みをもらった。
  隨後,我打電話到公司,就這樣唐突地請了一天假。
  その代わり、客の入りが多い朝の間、古河パンの手伝いをさせてもらった。
  早上,在賓客盈門的古河麵包店幫忙。
  正午近くなって客足が途絶え始めると、先に上がらせてもらう。
  中午客人稀少時,結束了麵包店的工作。
  そして汐に、翌朝には迎えにくることを告げて、古河家を後にした。
  告訴汐明早再來接她之後,就離開了古河家。
  向かう先は実家だった。
  要去的地方是我以前的家。


[b]直幸[/b]


  (BGM:町、時の流れ、人)

  ここだけは、何も変わっていないように見えた。
  這裡絲毫沒有改變。
  周りに立ち並ぶ家も5年前のままだった。
  鄰居家的房子也還是和五年前一模一樣。
  戸を開けた。鍵はかかっていなかった。
  我打開了沒有上鎖的門。
  7年前の朝…
  七年前的早晨…
  さようならと告げて、この家を後にした俺が…
  說著『再見』,離家而去的我…
  逃げ出した俺が…
  始終逃避著這裡的我…
  ようやく帰宅を果たした。
  終於又回來了。
  7年という月日。
  七年的時光。
  長い、長い家出だった。
  真得是,好漫長的離家出走啊。


  「ただいま」
  「我回來了。」

  小さく言って、家に上がった。
  輕輕地打聲招呼後,我走進了屋內。
  親父はテレビを見ていた。
  老爸正在看電視。

  「………」
  「………」

  俺の気配に気づいて、親父は振り返った。
  察覺我的氣息,老爸轉過頭來。


  「ああ…」
  「啊啊…」
  「朋也くん…」
  「朋也君…」

  久々に見る父の顔は、記憶のものより十歳ぐらい老けてみえた。
  老爸那許久未見的臉,似乎比記憶中更加蒼老了十年了。
  俺はテーブルにあったリモコンを掴み取ると、テレビの電源を消した。
  我拿起放在桌上的遙控器,把電視關掉。

  「ただいま」
  「我回來了。」

  「うむ…おかえり…」
  「喔…回來啦…」

  「ずっと、家にいたのか?」
  「一直待在家裡嗎?」

  「うん…」
  「嗯…」

  「世間は盆休みだってのにな」
  「現在明明是盂蘭盆節的假期。」

  「そうだね…」
  「是啊…」

  親父の正面に腰を下ろす。
  我在老爸的對面坐了下來。
  節約のためか、冷房は動いていなかった。
  大概是為了節約能源,冷氣並沒有打開。
  でも、台所の窓を開け放して風通しがよくしてあったから、蒸し暑くはなかった。
  不過廚房的窗戶是開著的通著風,所以屋子裡並不會很熱。

  「この休みに旅行をしてきたんだ」
  「這個假期我出了趟遠門。」

  「ほぅ…」
  「是嗎…」

  「ずっと北の地だ」
  「我去了北方。」
  「そこであんたの母親と会ってきたんだ」
  「在那裡遇見了你的母親。」

  「へぇ…」
  「這樣啊…」

  「いろんな話を聞いてきたよ」
  「我們談了很多話。」

  「ふむ…」
  「嗯…」

  この人は、ちゃんと俺の言うことを理解しているのだろうか…。
  這個人究竟有沒有聽懂我的話啊…。
  ただ、俺が喋った後に相づちを打つ、と決めているだけに思えた。
  還是說,打算在我說完以後裝傻。
  それでも俺は話し続けた。
  但是,即使是這樣我也要繼續說下去。
  それは約束だったからだ。
  因為這是約定好的事情。

  「…大変だったんだな、って思ったよ」
  「…真得是很辛苦啊。」

  「ふむ…」
  「唔…」

  「なぁ、親父…」
  「我說,老爸…」

  「うん…」
  「嗯…」

  「疲れたろ」
  「累了吧。」

  「…うん?」
  「…嗯?」

  「もう、疲れただろ」
  「已經,很累了吧。」
  「そろそろ、休んでもいいんじゃないかな…」
  「該不多是該休息的時候了…」
  「そう思うよ、俺は…」
  「我是這麼想的…」

  「………」
  「………」

  「田舎に帰ったら、どうかな…」
  「回老家去,怎麼樣…」
  「あんたの母さんがさ、そこで待ってる」
  「你的母親,正在那裡等待著你。」

  「………」
  「………」

  「あの場所だよ…」
  「在那個地方…」
  「あんたが幼い俺の手を取って…」
  「你曾經握著幼小的我的手…」
  「こいつは自分ひとりの手で育てる、って誓った場所だよ…」
  「發誓要靠自己的雙手將我撫養長大的地方…」

  「ああ…」
  「啊啊…」

  親父の目が遠くを見た。
[font= size=2 color=black]  老爸的目光彷彿看向了遠方。

  そこには、あの日の光景が映ってるのだろうか。
  在那裡,大概正映照著當年的情景吧。

  「あんた、もう十分頑張った…」
  「你已經十分努力了…」
  「だからさ、もう休めよ…」
  「所以,已經可以休息了…」
  「田舎に帰ってさ…」
  「回老家去…」
  「それで…母親と暮らしてやれよ…」
  「在那裡…和你的母親一起生活吧…」
  「…な」
  「…好嗎?」

  「………」
  「………」
  「もう…いいのだろうか…」
  「真的…已經可以了嗎…」

  「何が…?」
  「什麼…?」

  「もう…おれはやり終えたのだろうか…」
  「我的使命…真的已經結束了嗎…」

  (BGM:願いが叶う場所)

  あの日の誓い。
  那一天的誓言。
  …俺を自分ひとりの手で育てること。
  …要靠自己的雙手將我撫養長大的誓言。
  そんなことを思い出してるのだ、この人は…。
  這個人正在回想著這件事吧…。
  本当にそのためだけの、人生だったのだろうか…。
  他的人生只是為了實現這個誓言而持續著吧…。
  この人の人生は、俺のためだけにあった人生なのだろうか…。
  這個人的人生,只是為了我而持續著吧…。
  俺なんかの、出来の悪い息子のためだけに頑張った…
  為了我這個不孝的兒子而努力著…。
  …そんな人生だったのだろうか。
  …渡過了如此潦倒的人生。

  「あんた…何もかも犠牲にして、俺をこうして育ててくれたんじゃないか…」
  「你…不是已經犧牲了一切,將我撫養長大了嗎…」
  「もう十分だよ…」
  「已經足夠了…」
  「もう…」
  「已經…」

  「…そうか」
  「…是嗎。」
  「…いつのまにか…やり終えていたのか…」
  「…不知不覺間…我的使命已經結束了啊…」


  「…それは…よかった」
  「…這真是…太好了。」

  その晩はふたりで過ごした。
  這個晚上是我們父子倆一起度過的。
  一緒に風呂にも入った。
  澡也是在一起洗的。
  ずっと大きく感じていた父親の背は…
  感覺父親那寬闊的背…
  しらぬ間に、小さくなっていた。
  不知何時已經變得如此瘦小。
  それをごしごしと洗った。
  我認真地幫老爸擦著背。
  無心で洗った。
  一心一意地擦著。


  翌朝。
  第二天早上。
  着替えだけを詰め込んだバッグを持って、親父が家から出てきた。
  老爸背著換洗衣物的背包出門了。
  俺は、汐とふたりでそれを待っていた。
  我和汐兩人正等待著他。


  「ん…その子は」
  「嗯…這孩子是?」

  「あんたの孫だ」
  「是你的孫女。」

  「ほぅ…そうか…」
  「喔…是這樣啊…」
  「あの時の子か…」
  「是那個時候的孩子…」

  一度だけ、ふたりは会ったことがある。
  兩人只有見過一次面而已。
  あれは…とても辛い日だった。
  那是在…那段非常艱辛的日子裡。。
  汐が生まれて…間もない頃。
  汐剛出生…不久的時候。

  「大きくなったな…」
  「長這麼大了呢…」

  親父はしゃがみ込んで、汐の頭に手を載せた。
  老爸蹲下身,撫摸著汐的頭。
  そして、にっこりと笑う。
  然後,輕輕地笑了。
  そんな温かな笑みを、長いこと見ていなかった。
  這麼溫暖的笑容,已經很久沒有見到過了。
  ずっと昔、小さい頃の記憶の中に、その笑みはあった。
  那抹笑容只存在於我非常遙遠的兒時記憶中。
  幼い日の俺は、そうして微笑みかけられていた。
  小時候的我,就是在這樣的微笑之下成長的吧。





  「朋也…」
  「朋也…」
  「ほら、お菓子だ」
  「你看,是糖果喔。」
  「父さん、また出かけるけど…食べ過ぎないようにな」
  「爸爸又要出門了…不要吃太多喔。」
  「いつも、寂しくさせて、ごめんな」
  「總是讓你孤單一人,抱歉了。」
  「帰ってきたら、夕飯、ちゃんと作るから」
  「回來之後我會做一頓豐盛的晚餐。」
  「ふたりで食べような」
  「兩個人一起好好享用吧。」
  「な…朋也」
  「怎麼樣…朋也。」





  確かにあったんだ、そんな日が。
  確實是有過那樣的時光。
  そのことを今、遠い眼差しで、思い出していた。
  我回憶起了那段遙遠的往事。


  「………」
  「………」

  汐は、目を逸らすこともなく、じっと、祖父の顔を見つめていた。
  汐目不轉睛地注視著祖父的臉。
  親父は最後にその汐の頭を撫でて…
  老爸再次撫摸汐的頭…
  そして、立ち上がった。
  然後站起身來。


  「じゃあ、いくよ」
  「那麼,我出發了。」

  「親父…」
  「老爸…」
  「健康には気をつけろよ…」
  「要注意身體喔…」

  「ああ」
  「嗯。」

  「酒、飲み過ぎるなよ…」
  「酒不要喝太多喔…」

  「ああ」
  「嗯。」

  「タバコも、吸いすぎるなよ…」
  「菸也不要抽太多喔…」

  「ああ」
  「嗯。」

  「長生きしてくれよ…」
  「一定要長壽喔…」

  「ああ」
  「嗯。」

  「絶対に…恩返しにいくから…」
  「我絕對…會向你報恩的…」

  「ああ」
  「嗯。」

  「絶対に、いくから…」
  「我絕對會去的…」

  「ああ」
  「嗯。」

  親父の穏やかな顔…。
  老爸那安詳的表情…。
  すべてをやり終えた顔…。
  終於完成使命的表情…。
  それを見ていると、ぽろぽろと涙が零れだした。
  看著他,我的眼淚簌簌地流了下來。
  この人の人生は、幸せだったのだろうか…。
  這個人的人生真的幸福嗎…。
  一番幸せな時に…愛する人を亡くして…
  在最幸福的時候…失去了所愛的人…。
  それでも…残された俺のために頑張り続けて…
  即使如此…還是為了留下來的我而繼續努力…。
  俺みたいな…親不孝な息子のために…
  為了我這個…不孝的兒子…
  どんな孝行もできなかった息子のために頑張り続けて…
  為了我這個一直不盡孝道的兒子而努力著…
  それで…幸せだったのだろうか…。
  他的人生…真的幸福嗎…。

  「はっ…あ…」
  「嗚…嗚…」

  子供のようにしゃくり上げて泣いてしまう。
  我像小孩子般哭了出來。


  「どうした、朋也…」
  「怎麼了,朋也…」
  「どうして、泣いてる…」
  「怎麼哭了…」

  今は、強い息子として見送ってあげなくてはならないのに。
  明明是想作為一個堅強的兒子來為老爸送行的。
  これ以上、心配をかけないように…。
  為了讓老爸不再擔心…。
  もう安心して、休んでもらえるように…。
  為了讓老爸能安心地去休息…。
  何もかもを俺のために犠牲にした日々が終えられるように…。
  為了讓老爸那為我犧牲掉一切的日子到此結束…。
  終えられるように…。
  為了讓它到此結束…。
  ………。
  ………。
  …ズボンの裾が引っ張られていた。
  …我的褲腿被誰拉住了。
  汐が掴んでいた。
  是汐拉著我的褲腿。
  そう…これからは俺が親父の立場なんだ。
  沒錯…從今以後我也將扮演著老爸的角色。
  もう…子供じゃないんだ。
  已經…不再是小孩子了。
  涙を拭いて、顔をあげた。
  拭去眼淚,我抬起頭來。
  そして、言った。
  然後說道。

  「今日まで、ありがとう…父さん」
  「謝謝你一直以來的關懷…爸爸」


  「ああ…」
  「嗯…」
  「じゃあ、いくよ」
  「那,我走了。」

  「ああ。父さん、元気で」
  「嗯,爸爸,要保重。」

  「朋也も、元気で…」
  「朋也也是,保重…」

  父さんが背を向けた。
  父親轉過了身。
  俺を男手ひとつで育て上げた父の背を…
  我目送著父親那用男人的那一雙手將我扶養長大的背影…
  ずっと俺は見送っていた。
  目送著他漸漸遠去。
  汐と手を繋いで。
  同時緊緊握著汐的手。


[b][/b]

  (BGM:空に光る)

  その後の生活も、これまで通りアパートで続けることにする。
  在那之後的生活,照常在公寓中繼續著。
  あの家は、もともと借家だったし、滞納している家賃だけでもかなりの額にのぼる。
  這個家原本就是出租房,滯納的房租已經有相當的數目。
  必要最低限の家具以外は売り払って、滞納した家賃に宛った。
  為了付清欠款,我變賣了除生活必需品外所有的家具。
  それでもいくらか借金が残った。
  但即便如此我還是無法全額付清。
  それは、俺が地道に働いて、返していこうと思う。
  剩下的部分就用我的工資慢慢地償還吧。


  親父とふたりで暮らしてきた家は、もうふたりの家ではなくなる。
  曾經和父親一起生活過的家,已經不再是我們的家了。
  いがみ合いばかりだった日々。
  在那關係不和的日子裡。
  いい思い出なんて、ひとつとしてない。
  根本沒有什麼美好的回憶存在。
  大嫌いだった家と、大嫌いだった父親。
  只有不想回的家、和不想見的父親而已。
  けど…今はもう、この胸に仕舞える。
  然而…現在的我已經解開心結了。
  かけがえのない思い出として。
  在那裡所發生的種種,也成為了我無可取代的回憶。
  最後に敬礼をして、俺は家の前を去った。
  我行了最後一個禮後,永遠地離開了這曾經的家。

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